東京都労働委員会は、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員を労働組合法上の労働者と認定し、運営会社に対して労働組合との団体交渉に応じるよう救済命令を出しました。今回の決定は「ギグワーカー」の労働環境や待遇が改善される可能性を示すものです。今回はギグワーカーは労働者なのかについて解説します。
ギグワーカーとは?
「ギグワーカー」とは、インターネット上のアプリなどを用いて単発の仕事を請け負い収入を得る人のことです。「ギグ」はミュージシャンがライブハウスで行う短時間のセッションや、一度限りの演奏を指す英語のスラングで、そこから「一度限りの仕事を請け負う労働者」という意味合いで「ギグワーカー」と呼ばれるようになったといわれています。
アルバイトとの違い
アルバイトは主に学業を本業とする学生などがサポート的な役割で働く雇用形態で、継続的な雇用関係が成立しています。「単発の仕事を請け負う」ギグワーカーとは雇用形態が明確に異なります。
日雇い労働者との違い
働く期間に関して、ギグワーカーは数分〜数時間の単発の仕事を請け負うのに対し、日雇い労働者は一日単位の契約で雇われます。雇用契約についても、ギグワーカーの仕事のほとんどは業務委託で個人事業主の扱いとなりますが、日雇い労働者は企業と直接雇用契約を結びます。仕事の探し方も、ギグワーカーは求人サイトやアプリなどの「プラットフォーム」を利用し、日雇い労働者は公共職業安定所や求人情報誌、紹介などを利用する点が異なります。
フリーランスとの違い
ギグワーカーとフリーランスは、どちらも企業との雇用関係がありませんが、発注対象が異なります。フリーランスは「案件単位」や「プロジェクト単位」で継続性のある仕事を請け負い、納品までの時間にかかわらず報酬は変わりません。一方ギグワーカーは「時間単位」で単発の仕事を受注し、作業を行った時間分の報酬が支払われます。
ギグワーカーで働くメリット
自由に働ける
一般的な会社員と異なり拘束時間がなく、柔軟な働き方ができるのが最大のメリットです。「今週はフルに働き来週は休む」といった、会社員では難しい勤務スタイルも可能で、自分のスキルや都合に合わせて仕事を選べます。
収入が増える
本業を持つ方でも副業収入を期待でき、短時間の空き時間を利用して仕事ができます。空いた時間を活用して様々な仕事にチャレンジすれば副収入を得ることも可能です。ギグワーカーが生まれたアメリカでは、年収一千万円を超えるギグワーカーも存在します。
育児や介護と両立可能
まとまった時間が取れず正社員での就業が難しい方でも働くことができます。定時出社の必要がなく自分で働く時間を決められるため、育児や介護と両立しやすいのが特徴です。
ギグワーカーで働くデメリット
収入が不安定
好きなときに仕事ができる一方、必ず仕事があるとは限りません。固定給がなく、仕事がなければ収入もありません。病気や怪我で働けなくなった場合の保証もなく、安定した収入を見込むのは難しいのが現状です。
すべてが自己責任
個人事業主のため、通勤手当や有給休暇などの福利厚生はありません。病気や怪我で働けなくなっても休業補償はなく、業務中の怪我の治療費も自己負担です。失業した場合も失業保険は給付されません。配達員であれば交通事故のリスク、IT関連であれば著作権やセキュリティ関連の事故対策を考えて働く必要があります。
ギグワーカーは労働者なのか?
ギグワーカーの多くは個人事業主の扱いとなっており、働き方の自由度は高いものの、事故などがあった場合の責任は就業者自身が負うことになります。しかし冒頭で触れた通り、東京都労働委員会はウーバーイーツの配達員を労働組合法上の労働者と認定しました。
国内初の法的判断
今回の判断は、東京都労働委員会がウーバーイーツの配達員を労働組合法上の労働者としたもので、国内初の法的判断です。ウーバーイーツ側はこれを不服として中央労働委員会に申し立てを行っており、裁判に発展した場合、法的判断の確定までに数年かかる可能性があります。
この問題の背景について
世界的にフリーランスをはじめとした「雇用関係によらない働き方」が増えていますが、そうした働き方をする人は原則として様々な労働法の保護を受けられません。労働法に保護されないフリーランスの増加は世界的に顕著であり、各国で雇用関係によらない働き方をする人への法的保護が検討されています。海外でギグワーカー保護のルール整備が進む中、今回の判断を受け日本でも議論が活発になると見られます。
今回の判断が企業に与える影響
近年、原則として労働法の保護を受けられないギグワーカーをはじめとするフリーランスが、団体交渉の枠組みを用いて企業側と交渉したいというケースが増えています。従来は企業側が「自社の労働者ではない」として団交を拒否してきましたが、今回労働者として認められたことで、労働組合が申し出た団体交渉に誠実に応じる必要が出てきます。ただし今回の判断は労働組合法上の労働者というものであり、労働基準法や労働契約法上の労働者と判断されたわけではないため、労働時間規制や割増賃金支払い義務、解雇制限などの義務まで負うわけではありません。
まとめ
ギグワークは単発・短時間で仕事を依頼できるため、余計なコストをかけず必要なときに必要な分の労働力を確保できます。従来はギグワーカーが労働法の対象にならないことが問題視されていましたが、今回労働法の対象になるとの判断が示されました。不服申し立てにより結論は少し先になりますが、どのような結果になるか注視する必要があります。現在ギグワーカーと契約を結んでいない企業様も、今回の判断を受けて契約書が必要になる日が近いかもしれません。「書類を保管するスペースがない」「書類をどこに保管してあるか分からない」「閲覧の問い合わせ対応が面倒」など契約書管理のお悩みがございましたら、当社の「BUNTANリーガル」にお任せください。締結された契約書の情報をWEBシステム「BUNTAN」にデータベース化し、契約情報の検索や期限管理はもちろん、契約書原本の保管から廃棄までのライフサイクルやPDFなどの電子データまで一元管理いたします。ギグワーカー関連に限らず、契約書全般の保管方法にお悩みの企業様は、ぜひ一度当社にご相談ください。
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