企業の成長や組織体制の変化に伴い、オフィス移転は避けて通れないイベントです。しかし、移転は日常業務とは異なる多くの工程が発生し、担当者にとっては未知の連続といえるでしょう。特に初めての担当となる総務部門やプロジェクトリーダーにとっては、どこから手をつけるべきか悩むことも多いはずです。
この記事では、オフィス移転の全体像を把握しやすいように、時系列でやるべき作業をチェックリスト形式で整理しました。読み終えるころには、スムーズなオフィス移転を実現するための道筋が明確になるはずです。
目次
1. オフィス移転を成功させるために必要な事前準備
オフィス移転を円滑に進めるには、いきなり作業に入るのではなく、まず目的や体制、スケジュールなどの「準備段階」が欠かせません。
ここでは、プロジェクトを正しくスタートさせるために、必ず押さえておくべき3つの基本ステップを紹介します。移転が複雑化する前に、土台をしっかり固めておくことが成功の鍵です。
オフィス移転の目的を明確にする
まず最初に必要なのが、オフィス移転の「目的」や「ゴール」を明確にすることです。業績拡大に伴う人員増加への対応、立地の改善、コスト削減、リモートワーク対応強化など、理由は企業によって異なります。
目的が曖昧なまま進めると、物件選定やレイアウト設計に一貫性がなくなり、後々のトラブルにつながります。そのため、経営層と連携し、移転の背景や求める結果を文書化して全体で共有しましょう。
また、目的に応じて優先事項も変わるため、「何を重視するのか(アクセス・コスト・働きやすさなど)」もこの時点で明確にすることが重要です。
社内プロジェクト体制を整える
次に重要なのが、移転プロジェクトの体制整備です。担当部門だけでなく、総務・情報システム・経理・広報など複数部門が関与するため、横断的なチームが求められます。
以下のような役割分担があると、各工程の対応がスムーズになります。
- プロジェクトマネージャー:全体進行と意思決定
- 各部門のリーダー:自部署の要件整理と調整
- 実務担当:具体的な作業と外部対応
社内外の情報伝達を一元管理する窓口役を明確にしておくと、業者や関係先とのやり取りも効率的です。
スケジュールと予算の目安を立てる
スケジュールと予算の策定も、初期段階で必ず行うべきステップです。オフィス移転は「いつまでに何を終えるか」が非常に重要です。
【スケジュールの目安】
- 6か月前:物件選定開始
- 3か月前:契約・内装計画
- 1か月前:備品手配・案内
- 移転当日:搬出入
- 移転後:運用確認と改善
これらを基にガントチャートなどで工程管理を可視化すると、抜け漏れが防げます。
また、予算に関しては以下の項目を洗い出しておくと全体像が見えてきます。
項目 |
想定コストの例(目安) |
物件契約関連費用 |
敷金・礼金・仲介手数料など |
内装・什器・IT設備費用 |
工事費、家具、LAN構築など |
移転作業費 |
引越業者、人件費 |
広報・印刷費 |
名刺変更、会社案内の修正など |
その他の諸費用 |
登記変更、社内イベントなど |
想定外のコストが発生することもあるため、全体の10〜15%程度の予備費も計上しておくと安心です。
2. オフィス移転の6か月前までにやるべきこと
オフィス移転の約6か月前は、プロジェクト全体の流れを左右する重要な準備段階です。このタイミングで新オフィスに求める条件を明確にし、社内調整を進めながら信頼できる業者の選定を始める必要があります。
ここでは、効率的に物件選定を進めるための3つのタスクについて詳しく解説します。
新オフィスの条件を整理し物件探しを始める
最初に取り組むべきは、「新オフィスに求める条件の整理」です。どのような立地や広さ、設備が必要かを明確にしてから、物件探しをスタートさせましょう。
【条件設定のポイント】
- 希望エリアや最寄駅
- 必要な坪数(現在の社員数+将来の増員想定)
- ビルグレード(築年数、セキュリティ、共有設備)
- 入居可能時期と契約条件
これらの項目を事前に整理しておくことで、仲介会社との打ち合わせもスムーズになります。
物件探しの際は、複数の仲介会社に相談することで選択肢が広がるため、1社に絞らず比較検討するのが賢明です。
レイアウトや設備の要件を社内でまとめる
次に必要なのが、レイアウトや設備の要件整理です。実際の執務スペースや会議室、休憩スペース、ITインフラの配置などを事前にまとめることで、内装設計の精度が高まります。
【社内で検討すべき主な要件】
- 各部門の席数と希望配置
- 会議室数や大きさ
- リフレッシュスペースや倉庫の必要性
- ネットワーク機器や電源の位置
- フリーアドレス導入の有無
部署ごとにヒアリングを実施し、一覧表にまとめると可視化が進み、外部業者との打ち合わせも効率的になります。
また、オフィスの在り方を見直すチャンスでもあるため、働き方改革に合わせたレイアウト提案も積極的に検討すべきです。
オフィス仲介会社・移転業者の選定を始める
オフィス移転を成功させるうえで、信頼できる業者選びは極めて重要です。物件探しと並行して、移転全体をサポートしてくれるパートナー選定を進めましょう。
選定すべき業者の例
- オフィス仲介会社(物件探し・契約サポート)
- 内装設計・施工会社
- 引越し業者(什器の搬送・設置)
- ITベンダー(ネットワーク・電話設置)
各業者の過去実績、対応力、価格帯を比較し、相見積もりを取得して検討することがポイントです。
また、1社で複数業務を一括対応できる「オフィストータルサポート会社」もあるため、プロジェクト全体を任せたい場合は包括的に対応してくれる業者も候補に入れましょう。
3. オフィス移転3か月前までに進めておくべきタスク
物件が決まり始めるこのタイミングでは、契約関連や工事計画、各業者との調整など、実務的な準備が本格化します。
ここでは、確実に押さえておくべき3つの業務について詳しく解説します。これらを計画的に進めることで、後の工程での混乱を防ぐことができます。
物件契約と原状回復の確認を済ませる
新しいオフィスの物件が決まったら、正式な契約を締結する前に契約条件を十分に確認することが大切です。特に、解約時の原状回復義務や中途解約条件などを見落とすと、将来のコストやトラブルの原因になります。
【確認しておくべき契約項目】
- 賃料・共益費の総額と支払条件
- 原状回復の範囲と基準
- 更新時の条件・期間
- 中途解約の可否と違約金
- 入居開始日と引き渡し条件
また、現在のオフィスの原状回復義務の確認も同時進行で行うことが重要です。ビル管理会社と早めに協議し、スケジュールを押さえておくと安心です。
内装工事やネットワーク構築の計画を立てる
新オフィスの契約が整ったら、次は内装工事やITインフラの設計・施工計画を進めます。この段階で遅れが出ると、移転全体が遅延するため、詳細な工程管理が求められます。
【主な検討・手配項目】
- 内装レイアウトと家具配置
- 電源・LAN配線・無線ルーターの設置計画
- 電話・複合機・サーバーの配置と配線
- 空調・照明・防災設備の調整
ITネットワークや電話システムは、工事だけでなく通信回線の引き込み申請にも時間がかかるため、早めの手配が必要です。
設計図面は業者と連携して詳細に詰めておき、数回の修正を見越してスケジュールに余裕を持たせると安心です。
各業者との調整と契約を進める
移転業務では複数の外部業者が関与するため、業者ごとのスケジュール調整と契約書締結が欠かせません。ここで調整不足があると、当日のトラブルや工事の遅延につながる可能性があります。
【主な調整対象】
- 内装施工会社との詳細設計・工期の確認
- 引越し業者との搬出入日時のすり合わせ
- IT・電話業者との配線・動作確認日程
- 複合機・什器の納品日設定と設置場所調整
また、業者間で作業が重複しないように、「施工工程表」を作成して各業者に共有することが非常に効果的です。
契約時には、見積金額・作業範囲・納期・支払条件などを明記した契約書を交わすことを徹底し、トラブルを未然に防ぎましょう。
4. オフィス移転1か月前までに完了しておきたい実務作業
移転1か月前には、オフィス運営に必要な什器や機器の手配、法的・社内的な各種手続き、社員への情報共有など、実際の業務に直結する準備が中心となります。
ここでは、抜け漏れなく移転作業を進めるために必須となる実務タスクを3つ紹介します。
什器・備品・IT機器の手配と搬入手順の確認
まず取り組むべきは、什器や備品、IT機器の手配と配置計画の最終調整です。新オフィスで使用する家具や設備が納期に間に合うよう、十分な時間を確保して手配しておく必要があります。
【手配が必要な主なアイテム】
- デスク・チェア・キャビネットなどの什器類
- 会議室のテーブル・モニター・ホワイトボード
- 複合機・電話機・PC・サーバーなどのIT機器
- 防災用品や案内表示などの備品
搬入当日の混乱を防ぐためにも、搬入経路や設置順序、業者との連携スケジュールを事前に調整しておくことが大切です。
また、既存オフィスからの移設品についても「持ち出し」「廃棄」「再利用」に分けたリストを作成し、チェック体制を整えると管理がスムーズです。
各種手続き(住所変更・届出)をリストアップ
オフィスの住所が変わることで、各種の法的・行政的な届出や手続きが発生します。これらを事前にリストアップし、対応スケジュールを決めておきましょう。
【主な必要手続き】
- 法務局での本店移転登記
- 税務署・年金事務所・労働基準監督署などへの届出
- 銀行・保険会社・取引先への住所変更通知
- 名刺、封筒、会社案内、Webサイトの情報更新
社内の法務や経理担当と連携し、役所への届け出日や申請書類の準備を計画的に行うことが求められます。すべてを同時に進めようとせず、優先順位をつけて管理することがポイントです。
社員への移転案内と業務マニュアルの整備
最後に重要なのが、社員への情報共有と業務フローの整備です。社員一人ひとりが移転内容を正しく理解していないと、当日の混乱やトラブルの原因になります。
【情報共有のポイント】
- 移転日時と新オフィスの住所・アクセス方法
- フロアレイアウトや自席位置の案内
- 引越し当日のスケジュールと注意点
- 移転後のIT機器利用方法や新ルール
これらをまとめた移転案内資料やQ&A集、業務マニュアルを配布し、全社員に周知徹底することが必要です。
また、移転前後の問い合わせ窓口を明確にしておくことで、社員からの不安や質問にも迅速に対応できる体制が整います。
5. オフィス移転当日と前後で注意すべき点
オフィス移転当日は、物理的な作業だけでなく、工程管理やトラブル対応、確認作業が集中するタイミングです。また、移転直後の状況によってその後の業務の立ち上がりが左右されるため、前後を含めた万全の準備と管理が求められます。ここでは、移転当日とその前後に注意すべき具体的なポイントを紹介します。
搬出・搬入の進行管理とトラブル対応
移転当日は、什器やIT機器の搬出・搬入を計画通りに進めることが最大の課題です。引越し業者や社内担当者と連携し、細かな作業も段取り通りに行う必要があります。
【進行管理のポイント】
- スタート時間と終了時間の明確化
- 階段やエレベーター使用の申請と時間予約
- フロアごとの搬出順・搬入順の調整
- 作業ごとに担当者を明確化
また、万が一の破損・紛失やトラブルに備え、チェックリストと緊急連絡網を用意しておくことが重要です。特にIT機器などは衝撃に弱いため、搬送時の取扱いには十分な注意が必要です。
新オフィスの設備動作チェックとレイアウト確認
什器や設備の搬入が完了したら、レイアウト通りに配置されているかを確認するとともに、各種設備の動作確認を行います。
【チェック項目例】
- PC・ネットワーク・電話の接続と通信確認
- 照明・空調・防災設備の動作確認
- 会議室のモニターや備品の設置確認
- 各社員の座席位置と備品配置の整合性
レイアウト図と現地の状態が一致していない場合は、速やかに再配置や修正指示を出せるよう、現場責任者を配置しておくと円滑に進行します。
また、同時にセキュリティ対策(入退室管理や防犯カメラなど)が正常に機能しているかのチェックも欠かせません。
旧オフィスの原状回復と引き渡し
新オフィスでの作業と並行して、旧オフィスの原状回復とビルへの引き渡し準備も完了させる必要があります。原状回復はビルごとに規定が異なるため、事前の協議内容に沿って対応することが重要です。
【主な作業】
- パーティションや配線の撤去
- 壁・床・天井の補修
- 残置物の撤去と廃棄物の分別処理
- 最終清掃とチェックリストによる確認
引き渡し時には、ビル管理者との立会いが必要になる場合が多いため、スケジュール調整と資料の準備も忘れずに行いましょう。引き渡しが遅れると、追加費用が発生する可能性もあるため、余裕を持って作業を完了させることが理想です。
6. オフィス移転後に行うべき対応と改善
オフィス移転が完了しても、プロジェクトが終わったわけではありません。新しい環境で業務を円滑に進めるためには、運用開始後のチェックや社員の声を取り入れた改善活動が欠かせません。ここでは、移転後に実施すべき対応と、今後に活かすためのプロジェクト振り返りのポイントを紹介します。
業務再開後の不具合チェックと社員ヒアリング
業務が再開された直後は、想定外の不具合や使い勝手の悪さが判明するタイミングです。社員が日常業務に戻る中で気付いた点を早期にキャッチし、迅速に対処する仕組みを用意しておきましょう。
【不具合チェックの対象例】
- ネットワークや電話の通信トラブル
- 会議室予約や備品の使用ルール
- 動線の悪さや座席配置の不備
- 空調・照明の強弱など快適性の問題
改善のためには、社員からのフィードバックを集める仕組み(ヒアリングやアンケート)を導入することが有効です。特に部署横断的な意見を取り入れることで、見落としのない改善が実現できます。
備品の最終設置と在庫整理
次に行うべきは、備品や設備の最終設置と不要物の整理整頓です。移転当日は設置が間に合わなかったアイテムや仮置きされた什器について、計画通りの配置へと整えていきます。
【対応の具体例】
- フロアマップを見ながら最終配置の調整
- 仮置きされた段ボールや不要物の廃棄
- 防災備品の配置と点検
- 管理台帳の更新とラベリング作業
また、ストックルームや倉庫の整理整頓をこのタイミングで実施すると、その後の在庫管理や補充計画がスムーズになります。
移転プロジェクトの振り返りとナレッジ共有
最後に重要なのが、今回のオフィス移転のプロジェクト全体を振り返る作業です。何がうまくいき、何に課題があったかを記録として残すことで、次回以降の参考資料になります。
【振り返りのポイント】
- スケジュール通りに進行できたか
- 各業者の対応や費用対効果
- 社内連携・意思疎通のスムーズさ
- 予期せぬトラブルとその対応方法
このような内容を「プロジェクト報告書」や「チェックリスト更新版」として整理し、社内で共有することで、移転業務のナレッジが蓄積されます。
さらに、成功事例や改善点を全社共有することで、他部門や後任者にも貢献できる仕組みづくりにつながります。
7. オフィス移転のご相談ならSRIの「BUNTAN コンサル」へ
オフィス移転の計画に悩んでいる企業担当者の方へ、SRIが提供する「BUNTAN コンサル」は、移転業務に関わるあらゆるプロセスをサポートする総合コンサルティングサービスです。物件選定から内装、レイアウト設計、移転実務、原状回復対応まで、移転プロジェクトの全体をプロの視点で一元管理します。
【BUNTAN コンサルのサポート内容】
- オフィス移転の目的整理と要件定義支援
- 内装やレイアウトの設計提案と施工管理
- 引越し、ITインフラ、備品管理の調整と実行支援
- 移転前後のトラブル回避や社員対応マニュアル作成
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まとめ:デジタル化で契約書管理の効率化とリスク対策を
オフィス移転は、企業運営において重要なターニングポイントとなるプロジェクトです。物件探しから始まり、スケジュール管理、社内外との調整、業者選定、そして移転後の運用改善まで、多岐にわたる工程を一つひとつ丁寧に進めることが成功の鍵です。
今回紹介したチェックリストを活用することで、やるべき作業の全体像が明確になり、抜け漏れを防ぎながらスムーズに移転を進めることができます。特に初めてオフィス移転を担当する方にとっては、工程を時系列で可視化することで大きな安心感と実行力が得られるはずです。
もし自社だけで進めることに不安がある場合は、プロの支援サービスであるSRIの「BUNTAN コンサル」のような専門家の力を借りる選択も有効です。万全の準備と確かなパートナーで、納得のいくオフィス移転を実現しましょう。
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